【緒言】スポーツ分野で活用されている円皮鍼の主な治効機序は軸索反射による血流増加と推論されている。 しかし、 円皮鍼のような皮膚刺激を目的とした医療機器 (はり用器具) によって刺激局所の組織血流量 (以下、 局所血流量) が有意に増加するかどうかは、 現時点で明らかになっていない。 さらに、 鍼体が多芯で皮膚に挿入される滅菌済みの鍼 (以下、 多芯円皮鍼) は現在のところ市販されておらず、 その有用性は不明である。 【対象と方法】健常成人男性16名を、 多芯円皮鍼 (鍼長0.55mm、 鍼底部直径0.3mm、 鍼本数37本、 ピッチ1.0mm、 生体安全性樹脂製) を片側の前腕掌側中央部に30秒間留置し、 その1週間後にシャム円皮鍼 (同製の平坦な円盤) で同様に刺激する群と、 順序を反対に刺激した群に1:1の割合で無作為に割り付け、 単盲検下でランダム化クロスオーバー試験を実施した。 主要評価項目は局所血流量の変化量 (刺激後-前) および変化率とし、 レーザー血流計を用いて測定した。 副次評価項目は心拍数とし、 統計学的手法には線形混合モデルを用いた。 【結果】刺激5分後における局所血流量の変化量について、 シャム円皮鍼では平均-0.09 (95%信頼区間:-0.39~0.21) mL/min/100gであったのに対して、 多芯円皮鍼では平均8.83 (95%信頼区間:5.86~11.79) mL/min/100gとなり、 有意な介入効果が認められ (P < 0.05)、 時期効果 (P = 0.47)、 持ち越し効果 (P = 0.44) は認められなかった。 心拍数には介入効果は認められなかった (P = 0.95)。 【考察】本試験で用いた多芯円皮鍼により局所血流量が有意に増加することを確認した。 また、 心拍数の有意な増加を伴わなかったことから、 この反応は主に軸索反射や一酸化窒素の関与、 さらに体性-自律神経反射によるものと推察される。