2026 年 76 巻 1 号 p. 97-103
本稿では、 米国の補完代替医療 (CAM) における鍼灸の位置づけを概観し、 とくにニューヨーク市における鍼灸医療の実態と、 その外部環境の変化が施術院運営に与える影響を検討した。 近年、 米国ではオピオイド危機やメンタルヘルス対策を背景に非薬物的治療の需要が高まり、 鍼灸は CAM の中でも重要な選択肢として注目されている。 ニューヨーク市は多文化・高ストレス環境を特徴とし、 施術者数の多さに加え、 専門性の多様化や都市型需要の高さが際立つ地域である。 一方で、 物価・家賃の高騰、 輸入関税による備品・漢方薬材の価格上昇、 パンデミック以降の治安悪化など、 複合的な外部要因が鍼灸院経営に構造的な影響を及ぼしている。 2026 年に就任予定のマムダニ新市長が掲げる経済緩和策は事業環境改善への期待を生むものの、 実効性は今後の政策動向に左右される。 総じて、 ニューヨークの鍼灸環境は需要の高さと外部コスト上昇が並存する複雑な状況にあり、 持続可能性の検討には継続的な観察が必要である。 なお、 本稿で扱う 「鍼灸」 は、 英語の acupuncture に相当する概念を指す。