実験潰瘍に対する薬物の治療効果に関する研究は教多くなされているが, まだ確固たる治療法はみつかっておらず, また鍼灸刺激による治療効果の報告もほとんどみあたらない。そこでわれわれは, ラットの胃の酢酸・焼灼潰瘍に対しての鍼による経穴刺激の影響を組織形態学的に検索した。潰瘍作成部位は, 大彎側よりの血管の乏しい腺胃部とし, その漿膜面に直径3mmの酢酸ろ紙をあて, その上から約90℃に熱したコテをあて, 酢酸・焼灼潰瘍を作成した. 術後3日目を治癒出発点とし, その日から足三里, 胃瘍相当部位に鍼刺激をおこなう鍼刺激群と, 刺激を与えない対照群について治癒の程度を比較した。結果, 鍼刺激群の治癒の程度は, 対照群のそれに比べ, 治癒の促進が観察された。