抄録
正常者の肩甲上部に認められる圧痛・硬結につき解剖構造との関連を検討した。まず, 生体で肩甲上部の圧痛部位と同部位での硬結を調査した。その結果, 肩甲上部上縁のほぼ中央に最も著明な圧痛が認められ, 矢状方向に細長い硬結が触知された。生体でのX線所見, 及び遺体解剖所見より, 圧痛部位には, 第二肋骨を底面とし, 後鎖骨上神経, 僧帽筋, 頸横動静脈の多くの分枝, 副神経, 肩甲舌骨筋, 前鋸筋, 上後鋸筋などが認められた。この中で圧痛部位のみに特有な所見として, 頸横動静脈が叢状分枝をなしつつ第2肋骨上を矢状方向に通過することが挙げられ, これが圧痛・硬結の出現に何らかの関連性のあることが示唆された。