1989 年 39 巻 3 号 p. 306-312
新たに考案されたインピーダンス・カフ法により手指動脈を対象に血圧, 血管容積弾性率Evの測定を行った。血管の心拍に伴う容積変化と血圧を無侵襲計測し, 血管圧―容積特性から血管弾性率を求める。健康成人32名を対象に合谷施鍼群と手三里施鍼群に分け対照時から抜鍼30分まで経時的計測を行った。手三里群では施鍼時からEvは有意 (P<0.05) に下降し, 効果は抜鍼後30分まで持続した。合谷群では逆に施鍼時からEv変化は上昇 (P<0.05), 抜鍼後も上昇傾向にあった。以上の結果から手三里刺激が末梢動脈血管壁の伸展性を増加させ, 血管弾性率の低下を惹起するものと推察することができる。本計測は血管動態を定量的に把握する上で有用と考えられる。