灸療をセルフケアという形態で指導することは, 身体レベルのみならず生活レベルにおいても応用価値が高いと筆者らは考えている。“セルフケアとしての灸療”を推進する上での問題点を明らかにするため, 愛媛県南部の農業地域の住民49名を対象に自宅施灸指導と質問紙調査を1年間行い, (1) 家庭内ケア力の未活性, (2) 施灸行動のもつ時間的拘束性, (3) 灸の熱刺激に対する不耐性, (4) 灸痕に関する皮膚科的障害, (5) 灸療の適応または応用技術の限界, (6) 灸療の推進活動に対する社会的抑制力, という6つの問題点を抽出した。なお, これらの問題点にはそれぞれ対策を検討する余地があった。