抄録
本論文は, 単一被験者法におけるデータの分析評価法について論述することを目的とした。統計的有意性よりも臨床的有意性を重視するという基本的考え方について論じたのち, 第1に, もっとも多用されている視覚的精査の方法を紹介した。第2に, 系列依存性の可能性を有する個体データの分析評価には, 時系列分析法が適していることを指摘し, その簡便な方法としてC統計を紹介した。第3に, 母集団の分布型を考慮しなくてもよいノン・パラメトリックな検定法の有用性を論じた。第4に, 探索的データ解析法が単一被験者法の基本的考え方に適合することを示唆し, 今後の適用を推奨した。単一被験者データに適合する検定法の同定と開発が急務であるが, 同時に, 個体データに対する視覚的精査を併用することの重要性を強調した。