抄録
本論文は, 実験心理学領域の新しい実験計画法である, 単一被験者法の論理と適用方法を, 従来の群間比較法と対比させながら紹介した。単一被験者法は, 個体内比較によって個体行動の制御変数を同定することを目的としており, その特徴として, (1) 行動の測定の繰り返しによる安定データの獲得, (2) ベースラインと実験条件の反復による, 実験変数と従属変数の関数関係の同定, を指摘した。AB法, 反転法, 多層ベースライン法, 条件交替法, の各方法について, その適用方法と長所・問題点を論じた。あわせて, 群間比較法の問題点, 鍼灸学への適用の可能性についても論述した。