1994 年 44 巻 3 号 p. 233-237
鍼灸治療による医療事故の一つである医原性気胸は, 一般には, 発生頻度が希であるとされ無視されがちである。しかし今回の当院における調査の結果, 6年8ヵ月の間に頸, 肩, 胸郭部の施鍼によって749例中4例 (0.53%) に気胸が発生していることが分かった。その内の3例は入院治療を行った。このことより鍼による医原性気胸は無視のできない医療事故のように思われた。よって, 胸郭周囲部への施鍼においては, 局所解剖を熟知し, 患者の体型を考慮する必要がある。また, 雀啄をしたり, パルス電流を流したり, 保温の毛布をかけるときには鍼が深くならぬように配慮する。頸椎症, 頸肩腕症候群, 胸郭出口症候群に対する施鍼では気胸が起こり得ることを念頭におき施鍼する必要があると思われた。