1994 年 44 巻 3 号 p. 227-232
骨格筋に対するAgおよびAuイオンの作用濃度の違いが金鍼, 銀鍼の使用法の違いに関与する可能性を知るため, Agイオンで発生した筋収縮に対するAuイオン共存の効果を調べた。5μMAgイオンと20μMAuイオンの同時投与は収縮開始までの時間を5μMAgイオン単独時の6秒から60秒へと延長し, 発生張力も著しく抑制した。筋の壊死もなく, 顕微鏡下できれいな横紋構造がみられた。Ag (5μM)―収縮発生直後の20μMAuイオン投与は一過性張力の収縮時間の短縮とその後の持続性張力の抑制をもたらした。筋の構造は正常に維持されていた。Auイオンの投与を遅らすと収縮の抑制がみられなくなった。Auイオンの前処置ではAg収縮による細胞壊死を抑制し得なかった。
以上の結果は使用濃度, 使用順序, 投与時期等の条件の違いにより, Ag, Au両イオンの相互作用に違いが生じることを示している。