1994 年 44 巻 4 号 p. 329-332
我々が日常, 臨床で扱う膝関節痛について, 長期間経過している高齢者を対象に, 下肢のアライメント, 膝蓋骨の可動性と膝関節痛の関係を考えてみた。下肢のアライメントの計測を3種類の方法で, すなわち, 内反膝, 外反膝の程度をF-T角, 膝蓋骨の前額面での偏位をQ角, 膝の伸展制限をE角で計測した。膝蓋骨の可動性は上下, 左右方向を調べた。更に, 膝関節痛の好発部位を6箇所とし, うち2か所を選んで疼痛部位とした。結果は, F-T角が痛みの持続性に影響を与え, 痛みの部位は主に内膝眼と曲泉に集約される傾向があった。Q角とE角の変化は痛みの長期化に関与しなかった。膝蓋骨の可動性の低下も痛みの発症に影響を与えていると推測できた。