抄録
今, あらゆる分野において機械論的パラダイムに基づく合理的な科学主義の限界が指摘されている。その限界性を越える視点として生命論的なパラダイムが注目されている。それは医学の分野においても同様で生命的パラダイムに基づく「医学の質」が問われている。
東洋医学の生命観は, 本来的に生命論的パラダイムに基づくものである。特に鍼灸医学は「心身一如」の身体観に基づく無薬物療法であり, その治療原理は自然治癒力の賦活にある。そこには病人を中心とした全人的医療が展開され,「ケアの医学」が実践されている。
このような特徴をもつ鍼灸医学は「人にやさしい医学」として極めて魅力的であり, 次代を担う新しい医学として期待される。