全日本鍼灸学会雑誌
Online ISSN : 1882-661X
Print ISSN : 0285-9955
ISSN-L : 0285-9955
糖尿病に対する鍼治療の一症例
絹田 章中村 弘典皆川 宗徳黒野 保三
著者情報
ジャーナル フリー

1999 年 49 巻 2 号 p. 299-304

詳細
抄録

本症例は昭和59年に内科で血糖値が高いと言われてから5年間を経て糖尿病と診断されていることから糖尿病の進行が緩徐であったと思われる。また、経口血糖降下剤を服用してから血糖値が安定していたことからインスリン非依存型糖尿病であると推察する。しかし、糖尿病と診断された際、体がだるい・のどが乾く・急激な体重減少などの症状が現われているのでインスリン分泌障害が起きて糖尿病のコントロール状態が悪化していたものと思われる。原因としては過食や、人間関係による心理的ストレスの蓄積などが挙げられ、これが糖代謝異常を引き起こして糖尿病を発症したものと思われる。また、高血圧症についても糖尿病と診断される以前の高血糖から生じる高インスリン血症による糖尿病の合併症と推察した。
したがってホメオスターシスの鼓舞を目的とした鍼治療を行うこととした。
今日、糖尿病患者は著しく増加し、糖尿病管理に経口血糖降下剤の服用を余儀なくされている人々が多い。しかし、経口血糖降下剤の服用は副作用として心・血管系の障害をもたらすことが報告されている。
今回、我々は経口血糖降下剤を服用し、血糖値が安定していたため、経口血糖降下剤の服用を中止していたところ、再び糖尿病のコントロール状態が悪化したインスリン非依存型糖尿病患者に対して鍼治療を施した。糖尿病に対する鍼治療の有効性を客観的に検討する目的で (社) 全日本鍼灸学会愛知地方会研究部糖尿病班の独自の糖尿病カルテを使用して検討したところ、糖尿病に伴う自覚症状に変化が認められた。またHbAlc値は、鍼治療開始後12カ月間、7%レベルを維持していることが認められた。
これらのことから、鍼治療が糖尿病に対して何らかの影響を与えている可能性が示唆された。

著者関連情報
© 公益社団法人 全日本鍼灸学会
前の記事 次の記事
feedback
Top