全日本鍼灸学会雑誌
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鍼灸における感染防止対策の現状
主に開業鍼灸師を対象としたアンケート調査
新原 寿志村上 高康池宮 秀直西村 展幸尾崎 昭弘
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2003 年 53 巻 5 号 p. 646-657

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抄録

【目的】本調査の目的は、国内の鍼灸の安全性、なかでも感染防止対策の現状の一端を明かにし、その問題点および今後の取り組みについて検討することにある。そこで本調査では、WHOの「鍼の基礎教育と安全性に関するガイドライン」に沿ったアンケートを作成し、開業鍼灸師を中心に調査を行った。
【方法】 (社) 全日本鍼灸学会 (n=294) および (社) 日本鍼灸師会会員 (n=600) を対象に、2000年8月と2001年9月にそれぞれ調査を行った。調査項目は、1.回答者のプロフィール、2.清潔な施術環境、3.清潔な手指、4.施術野の準備、5.鍼および器具の滅菌と保管、6.無菌的手技および使用後の鍼具の廃棄に関するものとした。
【結果とまとめ】アンケート回収率は49.6% (443/894名) であった。調査の結果、国内の鍼灸の安全性に対する取り組みは、緩やかではあるがガイドラインの内容に沿った方向へ進んでいることが示唆された。しかしながら、未だディスポーザブル鍼の使用率は低く、また、多くの鍼灸師が素手で押手を行っていることなど、必ずしも適切な感染防止対策がとられているとは言えない現状が示唆された。今後、学校教育のみならず卒後教育の場においても、感染防止を含む鍼灸の安全性に関する教育を充実させていく必要があると考えられた。

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