抄録
【目的】スポ-ツを長期間行っているものは何らかの障害を抱えていることが多いが、その実態は明らかではない。そこでクラブ活動を行っている大学生を対象に、アンケ-ト形式でスポーツ障害について調査すると共に、アンケートの中で最も多かった腰痛に対して、トリガーポイント鍼治療の効果を検討した。
【方法】明治鍼灸大学の学生で、運動系のクラブに加盟している350名の中から無作為に150名を選び、競技種目やスポーツ障害の有無、痙痛部位や罹病期間など12項目に対して、アンケート調査を無記名の用紙項目法で実施した。また、アンケート調査の中で最も多かった腰痛に対して、腰痛に効果的と報告されている経穴への治療とトリガーポイント治療の効果を検討した。
【結果】アンケートの有効回答率は68.6%であり、回答者の平均年齢は20.3±1.7歳、競技種目としてはサッカーが最も多く、全体の77.6%でスポーツに伴う何らかの痛みが存在していた。障害部位としては腰殿部が最も多く、罹病年数は平均3.1±2.3年であった。また、受診した治療機関としては鍼灸院が最も多かったが、その半数で治療効果がなかったと回答した。一方、最も多かった腰痛に対して鍼治療を試みたところ、経穴治療よりもトリガーポイント治療の方が腰痛に改善が認められた。
【考察】今回行ったアンケート結果から、スポーツ選手の多くは何らかの疼痛を抱えており、その痛みは慢性化する傾向にあった。一方、スポーツ選手の慢性腰痛治療には、疼痛局所へ刺鍼を行うよりも、原因となる筋肉を把握し治療を行うほうが有効であった。