2006 年 56 巻 2 号 p. 127-139
本ワークショップの目的は、2004年の千葉大会において始まった『日韓鍼とEBMワークショップ』をふまえ、日韓共同研究の実施に向けたプロ口とコール作りの一環として、個別化した鍼灸治療を用いた臨床試験の可能性についての検討を行うことであった。今回のワークショップでは、全日本鍼灸学会、研究部EBMワーキンググループが検討してきた、単一被験者ランダム化研究法 (ランダム化n-of-1 trial) の実験デザインとその解析方法としてのランダマイゼーションテスト (R検定) についての紹介が高橋から、その実験デザインに基づいてパイロット試験として実施してきた花粉症に対する鍼治療の予防・治療効果について、角谷からその概要の紹介があった。また、大韓鍼灸学会の李からは、鍼治療における個別化された治療の重要性を考える上で重要な文献的検討を、これまでの個別化された治療法を用いた文献を網羅的に検討した結果が紹介された。また、金から、韓国における月経前症候群 (premenstrual syndrome : PMS) に対する鍼治療における診断にもとづく取穴法並びに補瀉の手技の使い分け、ならびに、対照群として適切ではない経穴部位への刺激を用いた臨床研究の成果の報告があった。
その後、個別化した鍼灸治療に適した臨床試験の方法論として、今回報告のあったn-of-1 RCTデザインの妥当性、花粉症の症状の季節変動の考慮の必要性、花粉症の問題点についてさまざまな観点から議論が行われた。また、実用的臨床試験の有用性についても検討が行われた。なお、学会場でのワークショップの後にも日韓両国の実務的な研究者による活発な議論が行われた。JSAMから山下仁 (安全性委員会) 、井上悦子 (適応症委員会) 両委員長より貴重な報告をいただいたが、本報告ではその内容は割愛させていただいた。
第一回のワークショップにおける検討課題や内容は、すでに本誌 (全日本鍼灸学会誌54 (5) : 717-727, 2004) ならびにオンラインジャーナル (JAM, vol. 1, 2005) に掲載されているので参照されたい。