抄録
胸腺腫を合併したstiff-person症候群患者の麻酔管理を経験した. 本疾患は中枢神経系の抑制性伝達物質であるGABAが減少しているため, 全身的な筋硬直を示す疾患である. 周術期に二つの興味ある現象を認めた. すなわち第1に十分な覚醒状態と, 筋弛緩モニターによる筋弛緩効果の消失を確認したにもかかわらず, 持続的な掌握が得られなかった. 第2に心電図R-R間隔の周波数解析の結果, 麻酔前から交感神経の活動性が優位になっていた. stiff-person症候群の麻酔管理時にはこれらの点を留意すべきであると考えられた.