2008 年 28 巻 2 号 p. 229-236
硬膜外麻酔は, 全麻酔症例の30%, 多いところでは40%に利用されている. 麻酔科医が, 全身麻酔よりわずかではあるが有利と考えているからであろう. しかし, 普及に伴って合併症の発症も増えてきた. 多様な合併症が発症するが, 重篤なものとして穿刺時に起こる神経や脊髄の損傷, カテーテル留置中に起こる硬膜外血腫や膿瘍, 薬物注入によって起こる心停止や前脊髄動脈症候群などがある. 硬膜外血腫の発症を少なくするためには, 術後に抗凝固療法を施行するときは, 持続硬膜外鎮痛を実施しない方がよいと筆者は考えている. 硬膜外膿瘍の発症を少なくするためには, 高度予防策またはそれに準じた消毒法を用いて直接感染を減らさなければならない. 硬膜外麻酔を確実に効かせて, それによる合併症の発症を少なくすることが, 高品質な麻酔を提供している証となる.