2011 年 31 巻 2 号 p. 243-249
近年緩和ケアについての関心が急速に高まってきているなかで,麻酔科医に対する期待は大きい.麻酔科医はこれまでにもさまざまな形で緩和ケアに貢献してきたが,がん性疼痛に対して行う神経ブロックは手術麻酔を主に担当する麻酔科医にとっては必ずしも馴染みのある業務ではない.持続くも膜下鎮痛法は本邦ではあまり普及していないが,手技的にはさほど困難でなく,難治性のがん性疼痛に有効であるため,われわれは2001年より行ってきた.倫理委員会の承認や,管理の工夫,地域との連携が必要であったが,患者25名中7名は在宅療養が可能になり,職場復帰できた症例もあった.全人的ケアとは「患者の全苦痛」に対するサポートにより通常の生活に近づけることで,ことに疼痛コントロールは重要であるといわれている.持続くも膜下鎮痛法は優れた鎮痛方法で,地域において実施することは全人的ケアとしての意義があると思われる.