2011 年 31 巻 5 号 p. 813-819
医療事故が即医事紛争につながるわけではない.医事紛争は,患者・家族と医療関係者との信頼関係の崩壊により発展してきている.麻酔事故の特殊性は,(1)その重大性,(2)密室性,(3)麻酔自体への国民の無理解の3つがある.このため,いったん事故が発生すると,医事紛争(刑事事件や民事事件)になりやすい傾向にある.またペインクリニックでは,結果としての後遺症(神経障害)が問題となることも指摘しておく.本稿では,過去の刑事裁判記録,医事紛争解決事案を調査し,その成り立ちと結果より,今後の医事紛争予防の道標と成るようにすべく考察した.