日本臨床麻酔学会誌
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日本臨床麻酔学会第32回大会 シンポジウム ─麻酔は脳にとって“悪”なのか─
術後認知機能障害を考える─臨床・基礎研究からの知見─
河野 崇
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2014 年 34 巻 1 号 p. 032-037

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抄録

  術後認知機能障害(postoperative cognitive dysfunction:POCD)は,麻酔・手術後に生じる長期的な脳機能障害の一種である.POCDは,術後患者のQOLを大きく低下させるのみならず,長期予後を悪化させることが報告されている.POCDの最も重要な危険因子は高齢であるが,そのほかに低学歴,脳血管障害の既往,および術前の認知機能障害がある.POCDの発症要因については,全身麻酔薬,術後痛,鎮痛薬,および手術侵襲によるものが考えられているが,特定できない場合も多く,個々の患者状態に複数の要因が関連しているものと考えられる.さらに詳細な病態機序に関しては,多くの基礎研究がなされているが,現時点で統一された見解には至っていない.つまり,POCDの全体像は依然として明らかではなく,POCDに対する特異的な予防あるいは治療法の確立には至っていない.本稿では,POCDに関するこれまでの臨床および基礎研究からの知見を整理し,今後の課題について検討したい.

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© 2014 日本臨床麻酔学会
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