日本臨床麻酔学会誌
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34 巻, 1 号
選択された号の論文の25件中1~25を表示しています
日本臨床麻酔学会第32回大会 招請講演
日本臨床麻酔学会第32回大会 シンポジウム ─麻酔は脳にとって“悪”なのか─
  • 森本 裕二
    2014 年 34 巻 1 号 p. 017
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/02/26
    ジャーナル フリー
  • 加藤 類, 橘 かおり, 内田 洋介, 橋本 聡一, 瀧田 恒一, 森本 裕二
    2014 年 34 巻 1 号 p. 018-024
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/02/26
    ジャーナル フリー
      近年,神経発達期の実験動物に対する全身麻酔薬暴露が神経細胞死や認知機能障害を引き起こすことが報告されている.海馬における長期増強現象(long-term potentiation:LTP)は認知機能に深く関与しているが,幼若期の麻酔薬暴露により長期的な影響を受ける可能性がある.われわれは,幼若期のラットにペントバルビタール,セボフルラン,プロポフォールを暴露し,海馬機能に与える長期的な影響を電気生理学的手法を用いて検討した.その結果これらの薬剤は,海馬CA1領域におけるLTPを長期的に抑制することが明らかとなった.幼若期の麻酔薬暴露は長期的なシナプス可塑性の異常を誘導し,成長後の認知機能障害の原因となる可能性が示唆された.
  • 合谷木 徹
    2014 年 34 巻 1 号 p. 025-031
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/02/26
    ジャーナル フリー
      術後認知機能障害(POCD)が起きることはよく知られている.その現状を理解することは,その対策あるいは麻酔薬による影響を考慮する上でも重要である.多くのPOCDに関する研究が行われているが,そこからの一律な解釈は研究の方法や対象の相違により困難であると考えられる.しかし,そのPOCDの傾向やリスク要因を明らかにすることは可能である.本稿では,POCDの現状として,頻度,危険因子,周術期の関連因子,予測因子,防止策について解説する.
  • 河野 崇
    2014 年 34 巻 1 号 p. 032-037
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/02/26
    ジャーナル フリー
      術後認知機能障害(postoperative cognitive dysfunction:POCD)は,麻酔・手術後に生じる長期的な脳機能障害の一種である.POCDは,術後患者のQOLを大きく低下させるのみならず,長期予後を悪化させることが報告されている.POCDの最も重要な危険因子は高齢であるが,そのほかに低学歴,脳血管障害の既往,および術前の認知機能障害がある.POCDの発症要因については,全身麻酔薬,術後痛,鎮痛薬,および手術侵襲によるものが考えられているが,特定できない場合も多く,個々の患者状態に複数の要因が関連しているものと考えられる.さらに詳細な病態機序に関しては,多くの基礎研究がなされているが,現時点で統一された見解には至っていない.つまり,POCDの全体像は依然として明らかではなく,POCDに対する特異的な予防あるいは治療法の確立には至っていない.本稿では,POCDに関するこれまでの臨床および基礎研究からの知見を整理し,今後の課題について検討したい.
日本臨床麻酔学会第32回大会 シンポジウム ─小児における区域麻酔─
  • 木内 恵子, 大畑 淳
    2014 年 34 巻 1 号 p. 038
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/02/26
    ジャーナル フリー
  • 関島 千尋
    2014 年 34 巻 1 号 p. 039-045
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/02/26
    ジャーナル フリー
      区域麻酔は非常に良好な鎮痛を得ることができるが,小児では全身麻酔下に行うため,小児麻酔を専門としている施設以外では知識,技術の不足や専用の道具がないなどの問題で積極的に行われていないのではないかと推察される.われわれの施設ではさまざまな区域麻酔を全身麻酔下に行っているが,今回は小児上肢手術に対する超音波ガイド下腕神経叢ブロックの実際や術中術後鎮痛について述べる.小児は成人に比べて年齢による体格差が大きく,ブロックの際の体位やプローブの選択などに工夫が必要であり,当院で実際に行っている方法を紹介する.また,超音波プレスキャンを利用した口唇外鼻形成術に対する眼窩下神経ブロックについても触れる.
  • 宮澤 典子
    2014 年 34 巻 1 号 p. 046-054
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/02/26
    ジャーナル フリー
      小児麻酔における体幹神経ブロックは超音波ガイド下法が導入され,より低い年齢層でも行えるようになった.全身麻酔下に腹直筋鞘ブロック,腸骨鼠径・腸骨下腹神経ブロック,腹横筋膜面ブロックなどが行われ,小児の末梢神経ブロックの中で最も数が多い.欧州における大規模調査では中枢性ブロックに比べて安全性が高く,小児では末梢性ブロックに移行する傾向がある.特に近年増加している日帰り手術や腹腔鏡手術の術後鎮痛として優れている.成人に比べ局所麻酔薬の過剰投与になりやすく注意が必要である.また解剖に習熟し,ファントムで超音波ガイド下に穿刺針を描出する技術を身につけてから実際のブロックに臨むことが大切である.
  • 虻川 有香子, 広木 公一, 尾崎 眞
    2014 年 34 巻 1 号 p. 055-058
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/02/26
    ジャーナル フリー
      米国では理論上,超音波下の仙骨硬膜外穿刺がスタンダードとされている.しかし本邦では,超音波装置本体および小児で必要なホッケースティック型プローブの普及が十分ではなく,また保険適用ではないことから滅菌袋などのコストを確保しにくいことなどもあり,さらに小児では穿刺部位が解剖学的に浅くわかりやすいことから仙骨麻酔は盲目下で行うことが多い.本稿ではその危険性に焦点を当てながら,われわれの臨床研究にも触れたい.
  • 釜田 峰都
    2014 年 34 巻 1 号 p. 059-065
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/02/26
    ジャーナル フリー
      小児脊髄くも膜下麻酔は,成人と比較して大きな違いがあり,血行動態の安定を保ったまま強力な鎮痛効果を実現できることは最も有用性の高い特徴である.手術時の侵害刺激を執刀前から強力に遮断することで術後疼痛の原因となる中枢性感作を防止できると考えている.また作用時間が短いため長時間手術や術後疼痛が強い手術には適さないものの,術後の運動ブロックからの回復は早く,これらの特徴を生かしわれわれの施設では主に日帰りの腹腔鏡下手術を中心に全身麻酔併用で小児脊髄くも膜下麻酔を行っている.最近では穿刺前にエコーを用いて脊髄奇形などを確認することで,さらなる安全性向上にも取り組んでいる.
総説
  • 井上 敬, 五十嵐 達, 小杉 志都子, 鈴木 武志, 香取 信之, 森崎 浩
    2014 年 34 巻 1 号 p. 066-074
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/02/26
    ジャーナル フリー
      全身麻酔の深度が術後患者の長期予後に関与する可能性が指摘されている.中でも吸入麻酔薬は,生体免疫機構の中心的役割を担うリンパ球や好中球あるいは他の免疫担当細胞の機能を抑制することから,この生体免疫抑制と長期予後の関連を示唆する報告が多い.吸入麻酔による生体免疫機構の抑制効果は,過剰な炎症反応を抑えて予後を改善する一方,担がんあるいは易感染状態では悪化させる可能性が高まる.本稿では,特に吸入麻酔薬による免疫担当細胞機能ならびに生体免疫機構への影響に焦点を当て,麻酔深度と長期予後について概説する.
原著論文
  • 高井 規子, 山本 芳央, 中河 達史, 横山 弥栄, 小野 成樹
    2014 年 34 巻 1 号 p. 075-080
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/02/26
    ジャーナル フリー
      自己血貯血は待機心臓外科手術において有効な手段とされている.今回,待機心臓手術における術前貯血式自己血貯血の現状を調査し,各施設での実施上の問題点について検討した.開心術実施施設の約半数で術前貯血は実施されていた.貯血基準は各施設で異なり,その基準は曖昧であった.また貯血を行わない理由として,マンパワーの不足などがあげられていた.自己血輸血認定看護師の認知度は低かった.今後の自己血貯血の推進には,貯血体制の充実や臨床の実態に即し,エビデンスに基づいた貯血基準の作成が求められると考えられた.
症例報告
〔日本医学シミュレーション学会〕 原著論文
  • 杉浦 健之, 大内田 絵美, 平手 博之, 有馬 一, 笹野 寛, 祖父江 和哉
    2014 年 34 巻 1 号 p. 095-100
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/02/26
    ジャーナル フリー
      マネキンを用いた経鼻挿管成功率を調べることで,エアウェイスコープ(AWS)補助下経鼻気管挿管の特性について明らかにすることを研究目的とする.AWSを挿入後,鼻腔から気管チューブ(ETT)を挿入した.頭位による影響,さらにETTの挿入角度や種類を変えて気管挿管成功率を調査した.後屈位のほぼ全例でETTは声門を通過したが,前屈位での成功率は有意に低かった.ETTの挿入角度により成功率が低下したが,種類による違いはなかった.AWSは他の補助具を必要とせず経鼻気管挿管に使用できるが,前屈位では成功率が低くなる.また,ETTの性質(弯曲,固さ)の違いは,先端の操作性に寄与し挿管成功率を上げる可能性が考えられる.
〔日本医学シミュレーション学会〕 短報
〔日本臨床モニター学会〕第24回日本臨床モニター学会 教育講演
  • 川口 昌彦, 林 浩伸, 阿部 龍一
    2014 年 34 巻 1 号 p. 106-116
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/02/26
    ジャーナル フリー
      脳動脈瘤や脳腫瘍に対する開頭手術,脊椎脊髄手術,胸腹部大動脈瘤手術などでは術中に運動誘発電位(motor evoked potential:MEP)モニタリングを施行し,術後の運動機能障害を予防することは重要である.開頭手術においては経頭蓋電気刺激,脳表直接刺激の相違点や,刺激強度の影響について留意する必要がある.脊椎脊髄手術では,術前からの運動機能障害例や側弯症の場合,MEPモニタリングが困難な場合もあり,増幅法などの工夫が必要である.胸腹部大動脈瘤手術では,大動脈遮断,低体温,人工心肺の導入などにより全身性の影響が大きくなるため,慎重な麻酔管理が要求される.術中MEPモニター施行時の注意点について概説する.
  • 香川 草平
    2014 年 34 巻 1 号 p. 117-123
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/02/26
    ジャーナル フリー
      経皮的動脈血炭酸ガス分圧測定とは加温された皮膚から透過してくる炭酸ガスをストウ-セベリングハウス(Stow-Severinghaus)電極によって測定するというものである.呼気ガス,経鼻呼気ガス,動脈血炭酸ガス測定値の比較を行い「皮膚電極による炭酸ガス分圧の数値」が最も正確に動脈血炭酸ガス分圧を反映することがわかった.皮膚電極による測定値のタイムコンスタントは約4分であった.無呼吸テスト,炭酸ガス換気応答の調査にも有用であることがわかった.最初に45℃で加温し15分ぐらい後に42℃にすれば12時間ぐらいの連続測定が可能である.経皮的動脈血炭酸ガス測定値は動脈血炭酸ガス分圧に対して1ないし2分の遅れがあることがわかった.
  • 田中 義文
    2014 年 34 巻 1 号 p. 124-132
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/02/26
    ジャーナル フリー
      心電図の成書は1930年代に完成され,標準12誘導,アイントホーフェンの正三角形,平均電気軸の理論が紹介されている.その後,心筋活動電位,イオンチャネルなどの知見,心腔内マッピングなどの発展はあるものの,成書としてはいまだに1930年代の説明が踏襲されている.本稿では細胞外電位は心筋活動電位と極性が逆転している性質を利用して,心内膜側活動電位から心外膜側活動電位の引き算結果が第II誘導体表心電図であることを解説した.また,種々の心外膜側活動電位を変化させて,異常心電図の発生原理について言及した.
〔日本臨床モニター学会〕第24回日本臨床モニター学会 シンポジウム
  • 菊地 研, 野々木 宏
    2014 年 34 巻 1 号 p. 133-138
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/02/26
    ジャーナル フリー
      最新の蘇生ガイドラインでは,ST上昇型心筋梗塞(STEMI)の早期診断が再灌流達成までの時間短縮へつながるため,病院到着前の12誘導心電図伝送を勧告している.この伝送システムとして,「モバイル・テレメディシン・システム(MTS)」と「ワイヤレス心電計を用いた12誘導心電図伝送システム(WES)」の開発と実用化を行ってきた.「MTS」は動画や12誘導心電図をリアルタイムで救急車から搬送病院へ伝送するもので,「WES」はワイヤレス小型心電計で記録された12誘導心電図情報がBluetooth(ブルートゥース)を介してタブレット端末で受信され,JPEGに変換した画像を搬送病院へ電子メールで送信するものである.これらのシステムにより,来院から再灌流達成までの時間(Door-to-Balloon Time)の短縮だけでなく,救急隊の現場到着から再灌流達成までの時間(EMS-to-Balloon Time)の短縮が可能になる.STEMIの転帰改善を目指した地域での診療体制の構築が期待される.
〔日本臨床モニター学会〕第24回日本臨床モニター学会 パネルディスカッション
  • 飯島 毅彦
    2014 年 34 巻 1 号 p. 139-144
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/02/26
    ジャーナル フリー
      日本国内8大学で測定された手術患者の循環血液量は82.3±14.8ml/kgであった.ばらつきは大きく,約50ml/kg~100ml/kgであり,個体差が大きい.この測定値はいわば静的循環血液量である.一方,SVV(stroke volume variation)のような動脈圧の揺らぎから推定される循環血液量は,静的循環血液量とは異なるものである.例えば血管収縮薬を使用すれば静的循環血液量は変化しなくとも静脈還流量は増え,SVVから推定される循環血液量の不足は是正される.動脈圧波形から推定される「循環血液量」はいわば動的循環血液量であり,静脈還流量にほかならない.この指標を静的な循環血液量と混同し,容量負荷のみで対応すると大量輸液につながる.この指標を正しく解釈しなければならない.
〔日本臨床モニター学会〕第24回日本臨床モニター学会 安全セミナ
  • 小野 哲章
    2014 年 34 巻 1 号 p. 145-150
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/02/26
    ジャーナル フリー
      臨床モニタ機器は,ICU/CCUをはじめ,手術室,病棟,処置室,人工透析室等の治療室等,病院のあらゆる部門・施設で使われる.患者の健康の回復・維持を目的に作られ使われるものであるが,使い方が不適切であったり,故障したものを使ったりすれば,患者に危害を与えかねない.これらの事故について,(1)電気ショック,(2)熱傷,(3)雑音障害,(4)アラーム問題,(5)停電の要因別に,その原因と対策を概観する.
  • 鈴木 利保
    2014 年 34 巻 1 号 p. 151-160
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/02/26
    ジャーナル フリー
      近年内視鏡の技術革新により内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)に代表される手術は内視鏡室で行われる機会が増加している.ESDは,手術時間が長くなる傾向があり,患者の鎮痛,鎮静は不可欠である.しかし鎮静薬による呼吸抑制,低酸素血症,呼吸停止などの有害事象の報告が散見される.内視鏡室におけるMonitored Anesthesia Care(MAC)の担当医は麻酔科医ではなく,多くは術者以外のスタッフが兼務しており,患者急変時の対応にも精通していない.とりわけ呼吸抑制の早期発見は不可欠である.今後MACにかかわる医師は,鎮静薬や鎮痛薬の薬理学的知識を持ち,鎮静・麻酔レベルの生理学的反応を的確に判断し,麻酔や救急処置に精通する必要がある.また内視鏡鎮静患者の呼吸管理にはSpO2に加えて呼吸数の連続的モニタが可能なRRaTMを使用することで換気,酸素化の両面から呼吸管理を行う必要がある.
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