医療ADRは,医療紛争の最終的な解決手段である民事訴訟の前段階として位置付けられ,医療紛争がADRによってスクリーニングされた上で,真に厳格な裁判手続による解決が必要な事件について裁判手続で紛争の解決が図られること,及びADRを経ることによって,医療紛争の争点が明確にされて,医療訴訟において円滑に審理が進むという効果があり,医療紛争解決のための重要な役割を負っている.しかし,我が国においては,医療ADRの整備が遅れていたものの,近年各地で整備が進み,一定の医療紛争の解決に役割を果たしているが,今なお,医師のADRに対する協力及び関心が低いという問題点が指摘される.