2016 年 36 巻 3 号 p. 271-279
本研究は婦人科腹腔鏡手術において心拍変動(HRV)および圧受容体反射感受性(BRS)を同時測定し,気腹手術における自律神経機能変化を明らかにした.HRVは心電図のR-R間隔変動から低周波成分と高周波成分の積分値の比であるLF/HF比を交感神経活動の指標として測定し,BRSは血圧上昇/低下に対する圧受容体応答で生じる徐脈/頻脈反射の指標としてBRS-up/downを測定した.麻酔導入前,気腹前,気腹3分後および頭低位2分後の時点でLF/HF比は1.1,0.5,1.2および0.6と変化し,気腹時に著明な交感神経優位状態が確認された.BRS-upは各時点で12.2,8.2,9.0および34.7ms/mmHgと変化し頭低位時に圧受容体応答の亢進を確認した.気腹時の交感神経活動の亢進と頭低位に伴う圧受容体応答亢進は急激な頻脈・徐脈を生じると推察され,循環管理上再認識する必要がある.