日本臨床麻酔学会誌
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原著論文
気管・気管支ステント留置術における麻酔方法による呼吸状態の比較─自発呼吸 vs 筋弛緩薬を投与した調節呼吸,後ろ向き観察研究─
岡本 さくら宗宮 奈美恵坂 英雄富田 彰
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2016 年 36 巻 4 号 p. 404-411

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抄録

【背景】気管・気管支ステント留置術は,ステントを気道の狭窄部位に挿入する手技である.最適な麻酔方法についてはさまざまな意見があり,いまだ確立したものはない.今回われわれは,気管ステント留置術を施行された患者を後ろ向きに調査し,自発呼吸群(SP群)と筋弛緩薬を使用した調節呼吸群(MR群)において,低酸素イベント(SpO2<95%)の発生割合,術中の平均P/F値,pH,PaCO2を評価した.【対象と方法】当施設において2013年7月から2013年11月の期間で,気管ステント留置術を施行された患者のうち,SP群10症例,MR群10症例を評価した.麻酔方法はプロポフォールTCI,レミフェンタニルによるTIVAで行った.SP群は自発呼吸を温存し,MR群は筋弛緩薬投与後に硬性鏡を挿入し,調節呼吸を行った.【結果】低酸素イベントの発生割合は,SP群で5例(発生割合50%,95%CI 23%~76%),MR群で0例(発生割合0%,95%CI 0%~28%)であった.SP群はMR群に比べ,術中の平均pHが低く(7.26±0.05 vs 7.40±0.07,P<0.001),平均PaCO2が高く(63.5±12.3 vs 40.6±8.58,P<0.001),平均P/F値が低かった(206.5±47.1 vs 387.2±68.1,P<0.001).【結論】気管ステント留置術における調節呼吸(筋弛緩薬あり)は,低酸素イベントの発生割合を低下させ,呼吸状態を良好に保った.

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© 2016 日本臨床麻酔学会
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