2019 年 39 巻 1 号 p. 32-37
薬物治療でコントロール不良なバセドウ病合併妊娠に対し,妊娠中期に胎児心拍数モニタリングをしながら甲状腺全摘術を施行した.全身麻酔により胎児心拍数の基線細変動は消失したが,高度な徐脈は生じなかった.また術後急性期には,母体の甲状腺機能が一過性に亢進したが胎児心拍数は変化しなかった.そして術後に母体に使用したランジオロールは胎児心拍や子宮収縮に明らかな影響を与えなかった.本症例では手術侵襲や全身麻酔,甲状腺ホルモン,β遮断薬などさまざまな要素が胎児の安全性を脅かす可能性があったが,胎児の状態や子宮収縮への影響を監視,評価する上で胎児心拍数モニタリングは簡便かつ有用であった.