2019 年 39 巻 3 号 p. 297-302
手術前の患者状態や手術中の患者管理,合併症コントロールによって,周術期の短期的予後に影響が出るのは当然のことである.しかし麻酔管理法によって患者の長期的予後にまで影響するのであろうか? 麻酔科医にとって身近で理解しやすい例としては,がん手術時の麻酔の影響に耳目が集まっている.がん治療においては手術による切除がmainstayであるが,手術中に生じるがん細胞の他組織への散布や手術侵襲に伴う細胞性免疫の抑制が,がん転移や再発に関与することは否めない.ましてや麻酔薬や麻酔法,その他手術中の患者管理が免疫抑制に拍車を掛けるとなれば,麻酔科医も患者予後に配慮した患者管理を心掛けるべく,新しい情報に敏感でなくてはならない.周術期の患者安全を守ることが麻酔科医のprimary missionであるが,患者の長期予後をもvisionに入れる必要性が出てきている.