2019 年 39 巻 3 号 p. 303-307
術後急性期の痛みは組織損傷による炎症性疼痛が主因であり,不十分な鎮痛は遷延性術後痛への移行を助長する可能性が示唆されている.術後は侵襲によるストレス反応により免疫抑制が生じる上に,周術期に用いる吸入麻酔薬やオピオイドはそれ自体,免疫抑制作用を有している.そのため鎮痛目的で炎症を抑えてしまうことにより,術後感染や創傷治癒遅延といった術後回復のアウトカムに負に作用している可能性がある.本稿では,術後痛と免疫抑制の関連について最近の知見を紹介し,周術期鎮痛法の術後回復への影響を概説する.