日本臨床麻酔学会誌
Online ISSN : 1349-9149
Print ISSN : 0285-4945
ISSN-L : 0285-4945
肝,胆道,膵臓手術麻酔における覚醒時の循環,代謝変動
GOEとNLA変法麻酔の比較
細田 蓮子島田 康弘水野 禎子下村 啓松浦 正司
著者情報
ジャーナル フリー

1990 年 10 巻 4 号 p. 365-373

詳細
抄録
肝,胆道,膵臓手術例で,全身麻酔覚醒時の呼吸,循環諸量の変動につき,ドロペリドール,ペンタゾシンを用いたNLA変法とGOE麻酔を比較した.その結果,鎮痛薬を主体としたNLA変法麻酔においても,覚醒時の血漿カテコラミン,酸素消費量は,GOE麻酔と同様に増加した.エピネフリンと酸素消費量のあいだには,正の相関関係が認められた(r=0.641,p<0.05).また酸素運搬能の増加にもかかわらず,混合静脈血酸素飽和度の低下,酸素摂取率の増加が認められた.血漿カテコラミン,血清アルドステロン値は手術開始とともに増加し,GOE群より高値を維持した.したがって,本NLA変法麻酔では,肝,胆道,膵臓系の広範囲にわたる開腹手術侵襲に対し,Stress freeの状態にあるとは考えにくく,術後の鎮痛効果も弱いことが推定され,麻酔覚醒から術後にかけての呼吸,循環,代謝の安定維持には,麻酔法として不十分であると推測した.
著者関連情報
© 日本臨床麻酔学会
前の記事 次の記事
feedback
Top