日本臨床麻酔学会誌
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麻酔覚醒時の循環,代謝に及ぼす硬膜外鎮痛法の効果(第II報)
細田 蓮子服部 ますみ島田 康弘下村 啓松浦 正司
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1991 年 11 巻 5 号 p. 570-579

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抄録
14例の予定開腹手術例で,GOE麻酔時の呼吸,循環,代謝諸量の変動に対する硬膜外鎮痛法併用の効果を検討した.その結果,非併用群では,麻酔覚醒後に血漿エピネフリンが約5倍に増加し,平均血圧,酸素消費量,酸素摂取率の増加,混合静脈血酸素飽和度の低下が認められた.エピネフリン(X)と酸素消費量(Y)の間にはY=285.7X+90.5 (r=0.72, p<0.01)の正の相関関係が認められた.一方,0.125%ブビバカイン20mlと2mgの塩酸モルヒネを硬膜外腔に注入し,手術創部の鎮痛を図り麻酔を覚醒させた群は,諸量の変動は軽度でエピネフリンの増加も認められなかった.酸素運搬能(X)と酸素消費量(Y)の間にはY=0.22X-32.0 (r=0.89, p<0.01)の正の相関関係が認められたが,対照群ではこの関係が破綻していた.麻酔覚醒時には疼痛刺激によって引き起こされる神経内分泌反応で血漿エピネフリンが増加し,エネルギー代謝を急激に亢進させて酸素消費を高めるため,酸素需給の不均衡を招いていると推定された.硬膜外麻酔による求心路遮断は,エピネフリンの過剰分泌を抑制し血行動態および酸素化能を安定させるため,麻酔覚醒から術後にかけて,特に予備能の不足した患者の管理に有用と思われた.
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