日本臨床麻酔学会誌
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希釈式自己血輸血と低血圧麻酔併用の臨床的検討
福崎 誠松本 正順岩永 修緒方 敬子井手 留美子後藤 裕
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1994 年 14 巻 1 号 p. 33-39

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抄録

股関節全置換術において,同種血輸血を回避する目的で,希釈式自己血輸血(Hct 24%)に低血圧麻酔(プロスタグランジンPGE1で収縮期圧75mmHgを約70分間維持)を併用した場合の安全性を検討するために,術後における血液検査ならびに臨床状態の面から非希釈式自己血輸血(貯血式・回収式,Hct 31%)に低血圧麻酔を併用した場合と比較した。両群とも同種血輸血は必要としなかった。貧血は希釈式群では術後4週目に,非希釈式群では3週目に正常下限域値に回復した。血液生化学における肝腎機能検査では,両群とも術後異常値を示さなかった。希釈式群において術後貧血のため創部治癒が遷延した例や血栓性静脈炎等の合併症のためにリハビリのスケジュールが遅延した例はなく,退院までの日数も両群で差はなかった。以上より,本法は同種血輸血を回避するための手段として臨床上有用と考えられる。

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