日本臨床麻酔学会誌
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14 巻, 1 号
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  • ハロセン,エンフルラン,イソフルラン,セボフルラン,ケタミンの比較検討
    早川 準, 柴田 俊成, 磨田 裕
    1994 年 14 巻 1 号 p. 1-6
    発行日: 1994/01/15
    公開日: 2008/12/11
    ジャーナル フリー
    乳房切断術を施行された女性50例を対象として,トリメタファンによる低血圧麻酔の麻酔方法の違いによる動脈血血液ガスへの影響について検討した。症例は使用した麻酔薬の種類によって,ハロセンと笑気を使用した群(10例),エンフルランと笑気を使用した群(10例),イソフルランと笑気を使用した群(10例),セボフルランと笑気を使用した群(10例),ケタミン持続静注と笑気を使用した群(10例)の5群に分けた。すべての群において低血圧中に有意なPaO2の低下がみられ,このPaO2低下の程度に群間差を認めなかった。以上より,低血圧麻酔中には麻酔方法に関係なく,肺における血液酸素化が障害されるおそれがあるので,適切なモニターによる監視と処置とが必要である。
  • 首藤 義幸, 高野 次郎, 豊田 茂芳, 大竹 知子, 天木 嘉清, 浜田 篤郎
    1994 年 14 巻 1 号 p. 7-11
    発行日: 1994/01/15
    公開日: 2008/12/11
    ジャーナル フリー
    体外循環中,高濃度酸素吸入中(100%O2)の,多形核白血球の活性酸素産生能について,開心術症例11例,非開心術症例9例で検討した。
    開心術症例において,体外循環中の多形核白血球の活性酸素産生能,補体消費量に有意な変化は認められなかった。また,非開心術症例(100%O2)においても,術中の多形核白血球の活性酸素産生能に有意な変化は認められなかった。いずれの症例も,PAO2/PaO2比に有意な変化はなかった。平均体外循環時間は153分,100%O2吸入時間は180分であった。以上の結果より,比較的短時間の体外循環,高濃度酸素吸入は肺傷害を起こさないことが推察された。
  • ノートパソコン,RS-232Cマルチプレクサ,市販表計算ソフトを用いて
    佐和 貞治, 小川 雅巳, 井本 真帆
    1994 年 14 巻 1 号 p. 12-20
    発行日: 1994/01/15
    公開日: 2008/12/11
    ジャーナル フリー
    ノートブック型パーソナルコンピュータに,表計算アプリケーションソフト『LOTUS 1-2-3』(以下1-2-3)とそのオンライン計測用アドインソフト『1-2-3 DataLogger R2J』(以下DataLogger)を用いて,4台の臨床モニタ機器から心拍数,4-ch血圧,4-ch体温,動脈血酸素飽和度,混合静脈血酸素飽和度などの基本的な麻酔管理上のデータをRS-232Cマルチプレクサを介して自動的に1-2-3のスプレッドシート上に取り込み,麻酔記録として利用できるようにした。得られたデータに対しては,1-2-3の表計算機能を用いることによりrate pressure products,体血管抵抗,肺血管抵抗などの重要なパラメータをリアルタイムで算出してトレンドグラフとして作成することができ,心臓麻酔の研修等に利用することできわめて有用であった。
  • 藤井 善隆, 田中 弘彦
    1994 年 14 巻 1 号 p. 21-24
    発行日: 1994/01/15
    公開日: 2008/12/11
    ジャーナル フリー
    膝関節鏡手術患者の麻酔を脊椎麻酔または腰部硬膜外麻酔仙骨麻酔併用で行ない,術中鎮痛の程度,術後頭痛の程度,歩行開始時間を比較した。脊椎麻酔には0.5%ブピバカイン2.5~3.0mlを用いた。腰部硬膜外麻酔には2%リドカイン15ml,仙骨麻酔には1%リドカイン10mlと0.5%ブピバカイン10mlをそれぞれ用いた。術中鎮痛の程度に有意差を認めなかった。一方,術後頭痛の程度は腰部硬膜外麻酔仙骨麻酔併用の方が有意(p<0.01)に小さく,歩行開始時間も有意(p<0.01)に短かった。
  • 福崎 誠, 岩永 修, 松本 正順, 緒方 敬子, 井手 留美子, 後藤 裕
    1994 年 14 巻 1 号 p. 25-32
    発行日: 1994/01/15
    公開日: 2008/12/11
    ジャーナル フリー
    股関節全置換術において,中等度血液希釈下(Hct 23%)でプロスタグランディン(PGE1)による収縮期圧75mmHgの低血圧麻酔を約1時間併用した際の肝細胞および腎尿細管細胞機能に及ぼす影響を,動脈血中ケトン体比(AKBR)と尿中NAG排泄量(NAG-index)を指標として,軽度血液希釈下(Hct 31%)の場合と比較検討した。AKBRは血液希釈後,低血圧中・中止後,術後とも脱血前(対照値)および軽度希釈下と差はなかった。NAG-indexは低血圧中止後~術後で対照値より有意に増加し,術後は軽度希釈下との間にも差が認められた。術後の血液生化学検査では肝・腎機能とも異常値は示さなかった。以上より,中等度血液希釈下でPGE1による低血圧麻酔を併用した場合,術後一過性の腎尿細管細胞障害が出現し注意を要するが,肝・腎機能における臨床的な後遺症は残さなかった。
  • 福崎 誠, 松本 正順, 岩永 修, 緒方 敬子, 井手 留美子, 後藤 裕
    1994 年 14 巻 1 号 p. 33-39
    発行日: 1994/01/15
    公開日: 2008/12/11
    ジャーナル フリー
    股関節全置換術において,同種血輸血を回避する目的で,希釈式自己血輸血(Hct 24%)に低血圧麻酔(プロスタグランジンPGE1で収縮期圧75mmHgを約70分間維持)を併用した場合の安全性を検討するために,術後における血液検査ならびに臨床状態の面から非希釈式自己血輸血(貯血式・回収式,Hct 31%)に低血圧麻酔を併用した場合と比較した。両群とも同種血輸血は必要としなかった。貧血は希釈式群では術後4週目に,非希釈式群では3週目に正常下限域値に回復した。血液生化学における肝腎機能検査では,両群とも術後異常値を示さなかった。希釈式群において術後貧血のため創部治癒が遷延した例や血栓性静脈炎等の合併症のためにリハビリのスケジュールが遅延した例はなく,退院までの日数も両群で差はなかった。以上より,本法は同種血輸血を回避するための手段として臨床上有用と考えられる。
  • 河本 昌志, 田中 信彦, 下川 歩, 横尾 宏毅, 高崎 真弓
    1994 年 14 巻 1 号 p. 40-46
    発行日: 1994/01/15
    公開日: 2008/12/11
    ジャーナル フリー
    心電図R-R間隔の周波数解析において,高周波成分は副交感神経活動の,低周波成分は交感神経と副交感神経の活動性の指標になるとされる。脊椎麻酔施行時に高位脊椎麻酔(<T4)となった青少年患者を若年者(15~19歳)と成人(20~24歳)それぞれ6名ずつに分け,この方法で解析を行ない,脊椎麻酔が心臓自律神経活動に及ぼす影響を調べた。脊麻中に若年者では4名がエフェドリンやアトロピンを必要としたが成人では必要としなかった。R-R間隔の周波数解析では,成人で高周波成分が増加し,若年者で高周波と低周波の成分はともに低下した。両群とも心臓自律神経活動のバランスは副交感神経優位の状態になったが,若年者の方がこの傾向が強く,年少者に脊麻を行なうときにはこの点に注意が必要と考えた。
  • 第1報 多因子の計測による予測法の評価
    山本 健, 柴田 恵三, 小林 宏充, 廣田 幸次郎, 新田 俊一, 小林 勉
    1994 年 14 巻 1 号 p. 47-53
    発行日: 1994/01/15
    公開日: 2008/12/11
    ジャーナル フリー
    気管内挿管を必要とする予定手術全身麻酔症例3,698例を対象として,喉頭展開困難の出現頻度と,その予測法を検討した。甲状軟骨を圧迫しても披裂部が直視できない喉頭展開困難は3,698例中72例に認められ,全体の1.9% (95%信頼区間1.5~2.3%)を占めた。前歯間距離,頸部の前後屈角,下顎の後退度の3因子による喉頭展開困難の予測結果は,検出感度61.1%,検出特異度74.8%,陽性適中度4.6%であった。上記の3因子による喉頭展開困難の予測法は,従来の多因子の計測法に比べて予測力に遜色がなく,かつ容易に実施できることから,麻酔前に試みる価値があると考えられた。
  • 術前に診断されていなかった1症例
    高岡 誠司, 天笠 澄夫, 堀川 秀男, 三浦 美英, 山口 勝也
    1994 年 14 巻 1 号 p. 54-58
    発行日: 1994/01/15
    公開日: 2008/12/11
    ジャーナル フリー
    64歳女性の膵頭十二指腸切除術(診断;膵頭部嚢胞腺癌)の麻酔管理を,持続硬膜外麻酔および笑気-酸素-イソフルランで行なった。手術操作に伴い血圧が上昇し,その管理は困難であった。カテコラミン産生腫瘍が疑われ,病理診断でパラガングリオーマと診断された。
    このような症例はまれではあるが,万一遭遇した場合には術中管理に難渋する。したがって,確定診断のついていない後腹膜腫瘍の麻酔管理に際しては,迅速な循環管理が行なえるよう十分な準備が必要であると思われた。
  • 立花 千秋, 小林 なぎさ, 佐藤 啓子, 大江 容子, 土肥 敏樹, 宮脇 富士夫, 須磨 幸蔵
    1994 年 14 巻 1 号 p. 59-62
    発行日: 1994/01/15
    公開日: 2008/12/11
    ジャーナル フリー
    ヘパリン依存性血症板凝集能亢進のASD手術症例を経験した。第1回手術はヘパリン(400IU/kg)化後のACTが延長しなかったため中止となった。精査によりチクロピジンが血小板凝集を抑制することが判明した。チクロピジンを1ヵ月間内服させた後,第2回手術を施行した。ヘパリン化後のACTは延長し(432秒),プロタミンによる中和も問題なく,無事手術を終了した。人工心肺前ヘパリン投与後のACT測定の必要性を再確認した。
  • 高岡 誠司, 天笠 澄夫, 高橋 達朗, 堀川 秀男
    1994 年 14 巻 1 号 p. 63-67
    発行日: 1994/01/15
    公開日: 2008/12/11
    ジャーナル フリー
    生後3ヵ月の口腔癒着症の麻酔を経験した。開口が不能である本疾患の麻酔上の問題点は,麻酔方法の選択と気道確保の方法である。三叉神経ブロックなどの局所麻酔や,気管内挿管を施行しない全身麻酔は出血への対処,呼吸抑制などの問題がある。われわれは,気管内挿管下の全身麻酔がより安全であると判断した。盲目的経鼻気管内挿管が不成功に終わったため,径2.2mmの喉頭ファイバースコープを用いて3.5mmのチューブを挿管し,笑気-酸素-セボフルランで維持した。極細のファイバースコープは損傷しやすく取り扱いに注意を要するが,これを用いた挿管方法は,乳幼児の挿管困難症例に対して有用な手段であり,麻酔科医はその手技に習熟している必要がある。
  • 大森 英哉, 関 純彦, 金谷 憲明, 岩崎 寛, 並木 昭義
    1994 年 14 巻 1 号 p. 68-71
    発行日: 1994/01/15
    公開日: 2008/12/11
    ジャーナル フリー
    二回のイソフルラン麻酔後,セボフルラン麻酔を行なったところ術後肝障害をきたした症例を経験した。症例は46歳の男性で下顎骨腫瘍のため皮弁再建術をイソフルラン麻酔を二度受けた後,3回目の手術がセボフルラン麻酔で行なわれた。術翌日GOT 2,427IU・l-1, GPT 1,141IU・l-1, LDH1, 146IU・l-1の上昇がみられた。GOT, LDHは術後3日で,GPTは20日ほどで正常域に復した。この間,好酸球,ALPには変化はなかった。薬剤性肝障害を疑いDLSTを行なったところイソフルランとセボフルランの交差過敏性が今回の原因として考えられた。
  • 高橋 麗子, 元塚 雅也, 佐伯 善機, 浜谷 和雄
    1994 年 14 巻 1 号 p. 72-76
    発行日: 1994/01/15
    公開日: 2008/12/11
    ジャーナル フリー
    目的:仙骨麻酔による肛門管内圧の変化を測定した。
    方法:仙骨硬膜外腔に1.5%メピバカイン10mlを注入し,肛門管内に留置した圧測定用カテーテルで肛門管内圧を測定した。静止圧は局麻薬注入後から10分間連続的に,随意収縮圧は注入5分後と10分後に測定し,おのおの注入前と比較した。
    結果:静止圧は,全例で注入直後より低下し,4分後以降は注入前より有意の低下を示した。随意収縮圧は,5分後,10分後でおのおの注入前の65%, 51%であり,有意に低下した。
    結語:肛門管内圧は仙骨麻酔の効果を早期に客観的に表わす指標となりうるものと思われる。
  • 木村 哲, 渡辺 誠治, 猪股 伸一, 西嶋 有希子, 矢口 裕一, 須賀 昭彦
    1994 年 14 巻 1 号 p. 77-81
    発行日: 1994/01/15
    公開日: 2008/12/11
    ジャーナル フリー
    心肺蘇生中の終末呼気炭酸ガス濃度(ETco2)は蘇生の成否とよく相関し,また自己心拍再開の指標としても有用であるといわれているが臨床例での記録は少ない。われわれは,麻酔中の心停止例で自己心拍再開時のETco2および終末呼気酸素濃度(ETo2)をラマン散乱ガス分析器(RASCALTM)にて記録しえた。心臓マッサージ中のETco2は10~20mmHgであったが,自己心拍再開と同時に急激に約60mmHgまで上昇した。ETo2は蘇生中ほぼ100%であったが90%まで低下した。ETo2は心肺蘇生中の重炭酸ナトリウム投与等治療の影響を受けにくく,ETo2も自己心拍再開の有用なモニターとなりうると考えられた。
  • 中丸 勝人, 永川 保, 窪 秀之, 佐藤根 敏彦, 伊藤 祐輔
    1994 年 14 巻 1 号 p. 82-88
    発行日: 1994/01/15
    公開日: 2008/12/11
    ジャーナル フリー
    ヘパリン加血液試料測定を基本とした全自動電解質分析装置NOVA社製SP-6を用い,Na+, K+, Ca++, Cl-, glucose, Htについて,直線性,再現性,キャリオーバー率,他機種との相関性,各電極とメンブレンの耐久性,粘稠度・ヘパリン・筋弛緩薬の影響を検討した。
    検討内容はいずれも良好な結果を示したが,Htのみが直線関係において傾きのある回帰式を示し,内蔵補正係数からの補正ができなかった。各電極とメンブレンの耐久性はNa+, K+が3ヵ月以上,Ca++が3ヵ月,Cl-とglucoseが約8日間であった。ヘパリン25μl以上の添加量では,Ca++測定値に対して有意な変動を認めた。また,専用洗浄液はglucose電極のメンブレンを劣化させる。さらに,流路に付着する蛋白および細菌などの洗浄に用いる次亜塩素酸ナトリウムはK+電極を使用不能にすることもわかった。
    本装置は管理面において若干の改善を要するが,精度については良好な結果を示し,緊急検査などの迅速な測定に優れていると評価した。
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