抄録
エキノコックス症に対する心,肝同時手術の麻酔を経験した。チアミラールで麻酔導入後,笑気・酸素・イソフルランで麻酔を維持した。心臓エキノコックス症に対する手術を人工心肺準備下に肝臓切除術に先立ち行なった。人工心肺を使用せず心外膜および心〓胞切除術が施行でき,心拍出量は増加した。このため,肝臓切除術においても,血圧,脈拍の維持が可能となった。また,イソフルラン麻酔は,心外膜切除時に徐脈を避け,肝切除時に肝血流を維持させる点から有用であったものと思われた。
心臓および肝臓エキノコックス症に対する同時手術においては,術前の心,肝機能評価に基づき,手術順序を決定することが重要と思われた。