1997 年 17 巻 10 号 p. 621-629
慢性関節リウマチ(RA)は自己免疫障害に起因し,破壊性の関節滑膜炎を主徴とする全身性疾患である.RAの麻酔で留意すべき点は,RAに起因する心,肺,腎,血管系の機能低下,長期の投薬などに起因する虚血性心疾患,癌,炎症性疾患,貧血,さらに頸椎のRA性変化による気道確保困難(difficult airway)などがある.RAに適する特別な麻酔薬はないが,鎮痛,鎮静薬に対する感受性が高い点に注意が必要である.気道確保困難に対し著者らはラリンゲルマスクおよび口マスクによるファイバー挿管法(口マスク法)を用いている.口マスク法では全身麻酔下,筋弛緩薬下に口マスクを用いて経口的換気を行ないながら経鼻挿管を行なう.意識下挿管に伴う患者の苦痛がまったくないのが特長である.