抄録
生体腎移植麻酔中,レシピエントを対象に,ヒト心房性利尿ポリペプチド(hANP)の効果を検討した.全身麻酔(酸素-亜酸化窒素-イソフルラン)と持続硬膜外麻酔下,hANPは血流再開前の容量負荷と同時に0.1μg/kg/minで投与開始した.測定項響は,血圧,心拍数,CI, CVP, PCWP値を,手術開始時,腎血流再開時,手術終了時の各時点で,さらに尿量を膀胱尿管吻合時から測定した.hANP使用群(n=6)は,hANP非使用群(n=6)に比べて腎血流再開時,手術終了時にCIは有意に上昇し,CVP, PCWPは手術終了時に有意に低下した.尿量は,hANP使用群で有意に上昇した.hANP使用により,血流再開時の容量過負荷の状態でもCIは上昇,CVP, PCWPは維持され,尿量は増加するため,腎移植レシピエントの麻酔管理上有用であると考えられた.