2000 年 20 巻 7 号 p. 460-464
出血性ショック等から術中心停止に至った,頸部脊髄損傷を合併した外傷性弓部大動脈損傷の緊急手術の麻酔を経験した.
70歳,男性.転落事故後,発見から約45分後に当院に搬入.到着時意識レベルはJCS20で,到着直後に呼吸停止に陥り,気管挿管,人工呼吸を施行した.両下半身の完全麻痺,貧血及び血圧低下の進行があり,C6~7の脊髄損傷及び弓部大動脈損傷,両側血胸の診断で,大動脈吻合術が施行された.麻酔は大量フェンタニル及びパンクロニウムで導入,維持した.術前術中に頸部脊髄損傷と大量出血による急激な血圧低下から心停止に陥ったが,頸髄損傷に起因する以外の障害を起こさずに救命し得た.