抄録
理科教育においてはこれまでも多くの研究者により, 自然体験や体験的学習の重要性が指摘され, 生命尊重の指導の必要性が提唱されてきた。本研究では, 大学生に対し「自然等の体験と生命観」に関する質問紙調査を実施し, 自然体験や生物に関する体験が生命観育成に及ぼす効果とその意義を考察した。その結果, (1)「自然体験」は生命観育成のための基礎的体験として有効であること, (2)生物に関する「学習体験」は, 動物や植物に対する生命観育成に有効であること, (3)「動物の飼育・接触体験」は, 動物に対する生命観育成に有効であること, (4)自然に恵まれた環境は生命観育成に有効であることが明らかになった。
以上のように, 自然体験は生命観育成の基盤となり, 植物の栽培・観察, 動物の飼育・接触などの体験は, 生命観育成に有効であることが統計的に明らかになった。理科教育においては, 直接生物に接し生命を理解することにより生命観を育成することが可能であると考えられる。