抄録
抗不整脈薬ピルメノール(P)を内服している人工透析患者の術中心停止を経験した.症例は70歳の男性で,週3回の透析と心室性期外収縮(PVC)に対しPを服用.慢性動脈閉塞により壊死したI,II趾切断術を全身麻酔下に予定した.麻酔はチアミラール,フェンタニルで導入し,セボフルラン,亜酸化窒素で維持した.手術開始5分後にPVCが連発し,心室細動に移行した.低カリウム血症とP内服によりtriggered activityを誘発しやすい状態で,浅麻酔も加わり導入後のPVCが心室細動に移行したと考えられた.Pを内服している透析患者では,服用の減量および電解質の維持,また術前に脱水状態にしないことが重要である.