抄録
精神疾患を合併し経腟分娩を試みた73症例について,硬膜外麻酔(硬麻)が分娩時および分娩後の精神状態に与える影響をレトロスペクティブに検討した.73症例中, 18症例(25%)が多弁,興奮状態,攻撃性の亢進などのいわゆる"錯乱分娩"となった.硬麻分娩60症例中"錯乱分娩"は12症例(20%)とバランス/局所麻酔13症例中6症例(46%)に比べその頻度は有意に低かった(p<0.05).しかしながら11症例(15%)は分娩時麻酔法にかかわりなく産褥1ヵ月以内に症状の再燃・増悪を認めた.精神疾患合併症例の分娩管理には硬麻が有用であるが,産褥期の精神症状の増悪・再燃予防には寄与しない.