日本臨床細胞学会雑誌
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原著
肺硬化性血管腫の細胞学的検討
松井 成明涌井 架奈子伊藤 仁安田 政実佐藤 慎吉長村 義之
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2007 年 46 巻 5 号 p. 256-261

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抄録

目的 : 肺硬化性血管腫 (screlosing hemangioma, 以下, SCH) の細胞学的特徴および高分化型腺癌との細胞学的相違点について検討した.
方法 : 気管支擦過細胞診 (キュレッテージ) および術中捺印細胞診において, 硬化性血管腫と診断された5例と, 肺高分化腺癌10例を用い, 各症例における背景, 細胞集団の出現パターン, 個々の腫瘍細胞の細胞学的特徴について検討した.
成績 : 細胞学的にSCHは以下の出現パターンを呈していた. A type : ライトグリーンに濃染する器質化間質を軸とした乳頭状集団, B type : 器質化間質を伴わない乳頭状集団, C type : シート状細胞集団, D type : 腫瘍細胞で構成された充実性集団, E type : 散在性細胞.
A~Dを構成する腫瘍細胞は, いずれも大小不同に乏しい類円形核を有しており, 核膜は薄く切れ込みくびれのみられるものはわずかであった. また, E typeの腫瘍細胞は, 他の細胞群と比較して顕著な核異型を示していた. 細胞学的に高分化腺癌との鑑別においては, 1) SCHにおける細胞の多彩性を認識, 2) A, D typeの細胞集団を指摘, 3) 器質化間質, 4) 集団を構成する個々の核, 細胞質所見の詳細な観察が重要と考えられた.
結論 : SCHは, 主だった5つのtypeが混在し, それぞれが特徴のある所見を呈していた. SCHの細胞診断に際しては, 標本内に出現する各細胞集団を指摘し, これらの構成細胞を詳細に観察することが肝要と考えられた.

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© 2007 公益社団法人 日本臨床細胞学会
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