日本臨床細胞学会雑誌
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症例
内膜細胞診が placental site trophoblastic tumor (PSTT) 診断のきっかけとなった 1 例
新井 詠美新井 正秀田口 明上坊 敏子横山 大山口 優美子蔵本 博行
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2008 年 47 巻 1 号 p. 34-38

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抄録

背景 : placental site trophoblastic tumor (PSTT) はまれな疾患で, その細胞診所見の報告は非常に少ない. 内膜細胞診で PSTT を疑った症例を報告する.
症例 : 32 歳, 2 経妊 2 経産. 主訴は 5 ヵ月間の産褥無月経後の不正性器出血. 血清 hCG は 99 mIU/ml, hPL は 0.62μg/ml であった. エンドサイトにより採取した内膜細胞診の所見は, (1)出血性背景だが壊死物質は目立たず, 正常内膜細胞が出現, (2)大型の異型細胞が孤立性またはシート状小集塊を形成して出現, (3)異型細胞の細胞質は豊富で, 核クロマチンは増量し, 核大小不同を認めた. 2 核の細胞もあり, 核小体を数個認めた. (4)明らかな絨毛構造はない, であった. 以上から, 絨毛癌を含む絨毛性疾患を強く疑った. 子宮内膜全面掻爬によって得られた組織にも絨毛構造はみられず, 免疫組織化学では hCG, hPL ともに陽性で, 後者が多いという結果であった. 以上より PSTT を疑い, 単純子宮全摘術を施行した. 摘出子宮の筋層には 2.0×0.8 cm の境界明瞭な暗赤色の腫瘤として PSTT が局在していた.
結論 : 細胞所見が PSTT 診断のうえで参考となることが示唆された.

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© 2008 公益社団法人 日本臨床細胞学会
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