日本臨床細胞学会雑誌
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症例
ラブドイド形質を伴う肺大細胞癌の 1 例
佐藤 勝明中野 万里子寺内 利恵竹中 美千穂朝倉 善史梶 幸子野島 孝之上田 善道
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2008 年 47 巻 1 号 p. 64-68

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抄録

背景 : ラブドイド形質を伴う大細胞癌は, 肺大細胞癌のまれな一亜型で予後不良な腫瘍である. 今回, われわれは捺印細胞診で細胞学的検討の機会を得た 1 例を経験したので報告する.
症例 : 81 歳, 男性. 右上肺野末梢に急速に増大する腫瘤を指摘され切除術を受けたが, 約 7 ヵ月後に死亡した. 腫瘍は最大径 7.2 cm で, 境界明瞭であった. 腫瘍捺印細胞診では, 好中球の多い背景に, 大型の癌細胞が緩い接着性をもって多数認められた. 癌細胞は, 明瞭な核小体を中心に有する偏心性核とライトグリーン好性の豊富な細胞質をもっていた. 核は水泡状で, 粗なクロマチンが増量し, 細胞質には硝子様小球体に相当するライトグリーン淡染領域を認めた. 組織学的にはラブドイド細胞がほぼ腫瘍全体に認められた. 胸膜浸潤像やリンパ節転移はなかった. 硝子様小球体は, 免疫組織化学的に vimentin 陽性で, 電子顕微鏡での観察で中間径フィラメントの凝集と確認された.
結論 : ラブドイド形質を伴う大細胞癌は, その特徴的な細胞像から組織型推定は可能である. 通常の大細胞癌と比較し予後不良なので, 細胞診における診断は重要であり, まずはその組織型の存在を認識する必要がある.

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© 2008 公益社団法人 日本臨床細胞学会
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