背景 : ラブドイド形質を伴う大細胞癌は, 肺大細胞癌のまれな一亜型で予後不良な腫瘍である. 今回, われわれは捺印細胞診で細胞学的検討の機会を得た 1 例を経験したので報告する.
症例 : 81 歳, 男性. 右上肺野末梢に急速に増大する腫瘤を指摘され切除術を受けたが, 約 7 ヵ月後に死亡した. 腫瘍は最大径 7.2 cm で, 境界明瞭であった. 腫瘍捺印細胞診では, 好中球の多い背景に, 大型の癌細胞が緩い接着性をもって多数認められた. 癌細胞は, 明瞭な核小体を中心に有する偏心性核とライトグリーン好性の豊富な細胞質をもっていた. 核は水泡状で, 粗なクロマチンが増量し, 細胞質には硝子様小球体に相当するライトグリーン淡染領域を認めた. 組織学的にはラブドイド細胞がほぼ腫瘍全体に認められた. 胸膜浸潤像やリンパ節転移はなかった. 硝子様小球体は, 免疫組織化学的に vimentin 陽性で, 電子顕微鏡での観察で中間径フィラメントの凝集と確認された.
結論 : ラブドイド形質を伴う大細胞癌は, その特徴的な細胞像から組織型推定は可能である. 通常の大細胞癌と比較し予後不良なので, 細胞診における診断は重要であり, まずはその組織型の存在を認識する必要がある.