日本臨床細胞学会雑誌
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症例
顎下腺オンコサイト癌の穿刺吸引細胞診の 1 例
佐々木 健司神田 真規米原 修治岩田 和宏森 直樹倉西 文仁黒田 義則
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2008 年 47 巻 2 号 p. 116-121

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抄録

背景 : 唾液腺のオンコサイト癌はきわめてまれな上皮性悪性腫瘍である. ここでは, 顎下腺に発生したオンコサイト癌について穿刺吸引細胞所見を中心に報告する.
症例 : 55 歳, 男性で, 1 年前より右顎下部の腫瘤を自覚していたが, 増大してきたため, 来院した. 顎下腺の穿刺吸引標本では, きれいな背景の中に上皮性結合を示す細胞集塊が多数みられた. 集塊は不規則重積配列を示していた. 細胞質は顆粒状で豊富であり, 境界は不明瞭であった. 核は円形で大小不同は著しく, 核形不整を示す細胞や巨大な核をもつ細胞が混在していた. クロマチンは増量し, 単個の大型核小体が目立った. 背景はきれいであり, 細胞配列に極性がない点や顆粒状の豊富な細胞質をもち, きわめて強い異型性を伴っている点を考慮してオンコサイト癌を推定した. 病理組織学的には好酸性顆粒状の豊富な細胞質をもつ腫瘍細胞が充実性ないし小胞巣状に増殖していた. 個々の細胞は多形性を示し, 核小体は大型であった. 腫瘍細胞は顎下腺周囲の軟部組織に浸潤し, 神経周囲浸潤が目立った. Phosphotungstic acid-hematoxylin (PTAH) 染色では細胞質に紺色の顆粒が認められ, 抗 mitochondria 抗体を用いた免疫染色でも陽性所見を呈した. 以上の所見よりオンコサイト癌と診断した.
結論 : 高悪性度型オンコサイト癌の細胞診では, 細胞の異型性や顆粒状細胞質に着目すれば診断可能であると考えられた.

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