日本臨床細胞学会雑誌
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症例
肺原発滑膜肉腫の 1 例
平林 陽介小川 命子橋本 尚子藤原 美恵子鈴木 高祐尾辻 瑞人澤田 達男橋本 洋
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2008 年 47 巻 2 号 p. 122-126

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抄録
背景 : 滑膜肉腫の多くは四肢の大関節近傍に発生し, 肺原発のものはまれである. 今回われわれは肺原発滑膜肉腫の 1 例を経験したので報告する.
症例 : 48 歳, 男性. 検診にて右肺に腫瘤陰影を指摘された. CT や MRI 検査で右肺門部に長径 5 cm の辺縁明瞭な球状腫瘤を認め, 肺癌や肉腫が疑われ, 右上中葉切除術が施行された. 捺印細胞診では, 紡錘形から類円形の腫瘍細胞が, 束状や錯綜状および孤立散在性に出現しており, 核密度が高かった. 細胞は比較的均一で N/C 比はやや高く, 細胞質は均質でライト緑に淡染し辺縁不明瞭であった. 核は紡錘形から類円形でときに切れ込みを有し, クロマチンは細顆粒状均一で, 小型核小体を数個認めた. 組織学的には紡錘形腫瘍細胞が密に束状増殖し, 免疫組織化学的には vimentin, CD99, bcl-2, cytokeratin AE1/AE3, EMA が陽性であった. パラフィン切片からの RT-PCR で融合遺伝子 SYT-SSX1 が証明され, 単相性線維型滑膜肉腫と診断した.
結論 : 肺原発の滑膜肉腫はまれな腫瘍である. 紡錘形細胞主体の腫瘍の鑑別は難しく, 滑膜肉腫も鑑別の一つにあげながら, 免疫組織化学的検索や遺伝子検索が必要と考えられた.
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© 2008 公益社団法人 日本臨床細胞学会
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