日本臨床細胞学会雑誌
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症例
細胞診が早期発見に役立った悪性胸膜中皮腫の 1 例
尾花 ゆかり生沼 利倫杉谷 雅彦小松 京子関 利美砂川 恵伸楠美 嘉晃根本 則道
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2008 年 47 巻 3 号 p. 205-210

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抄録

背景 : 悪性胸膜中皮腫の画像所見は胸水貯留, 胸膜肥厚像, 腫瘤影を示すことが多いとされるが, 原因不明の胸水貯留のほかは, 明らかな異常を認めず, 胸水細胞診が診断の契機となった悪性胸膜中皮腫 (stage Ib) の 1 例を経験したので報告する.
症例 : 60 歳代, 男性. 背部痛を主訴に近医を受診し, 胸部 X 線にて左胸水貯留を指摘され胸水細胞診にて悪性中皮腫の可能性が疑われ, 精査目的で当院を紹介された. 胸部 X 線, CT, 胸腔鏡検査等の画像検査を施行するも左胸水貯留のほか, 明らかな腫瘍所見は得られなかった. その後, 毎月定期的に外来で検査が施行されたが, 初診 5 ヵ月後の胸腔鏡下胸膜生検で最終的に悪性中皮腫, 上皮型と診断した. 患者は化学療法を受け, 初診から約 4 年が経過した現在も存命中である.
結論 : 本症例のように, 胸水細胞診は特徴的な画像所見が出現する以前の中皮腫症例の早期発見の契機となる可能性があり, このことを念頭において診療にあたることが重要と考えられた.

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© 2008 公益社団法人 日本臨床細胞学会
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