抄録
背景 : 血管筋脂肪腫 (Angiomyolipoma : AML) は平滑筋, 血管, 成熟脂肪細胞の各成分からなる比較的まれな良性腫瘍である. 今回われわれは肝に発生した AML を経験したのでその細胞像を中心に報告する.
症例 : 60 歳代, 女性. 不正性器出血を主訴に来院. 子宮内膜生検にて類内膜腺癌 G2 と診断され, 手術目的で入院した. 術前の CT 検査で肝 S6 に不整形の腫瘤が認められた. 子宮体癌の転移が疑われ, 婦人科手術に先立って肝腫瘍に対し, 肝部分切除が施行された. 肝切除標本について術中迅速検査が行われ, 組織診断にて AML が疑われた. 迅速検査時の捺印細胞像では背景に炎症細胞と脂肪細胞および, 紡錘形細胞が出現していた. 紡錘形細胞は, 辺縁明瞭な大型集塊で出現し, 集塊内には毛細血管や成熟脂肪細胞, 大小不同のみられる異型細胞が認められた. この異型細胞は, 一部に核形不整, 大型核小体, 核内空胞等がみられ, 良悪性の鑑別を要する細胞であった. 以上の所見から非上皮系の腫瘍を疑ったが良悪性鑑別困難であった. また大型異型細胞は免疫細胞染色で, Human Melanosome (HMB45) 陽性を示した.
結論 : AML では悪性との鑑別を要する大型異型細胞が出現することから細胞診断において慎重に観察する必要があると考えた.