目的 : 日本乳癌学会が提唱している乳腺細胞診報告様式 (第 15 版乳癌取扱い規約, 2004 年) について, 私どもが従来から用いてきたパパニコロウ分類法と比較し, その有用性を検討した.
方法 : 2007 年 1 月∼2008 年 5 月に国立病院機構仙台医療センターで実施された穿刺吸引細胞診 334 例のパパニコロウ分類による判定結果を現報告様式に変換し, さらに英国乳腺スクリーニング基準に従って感度・特異度などの精度管理指標を求めた.
成績 : 不適正検体が 52 例 (15.6%) に認められた. 適正検体 282 例のうち, 従来のパパニコロウ分類の I・II が現様式の判定区分「正常/良性」(164 例, 58.2%) に, III の一部が「鑑別困難」(12 例, 4.2%) に, III の残りと IV が「悪性の疑い」(11 例, 3.9%) に, V が「悪性」(95 例, 33.7%) に再整理された. この判定区分への再整理に基づいて精度管理指標を算出し, 全体的感度 89.2%, 絶対的感度 79.2%, 特異度 72.4%, 偽陰性率 7.5%, 偽陽性率 0%, 陽性的中度 100%が得られた. なお, 「悪性の疑い」の組織学的悪性比率は 90.9%となり, 日本乳癌学会の求める目標値 (90%以上) をクリアした.
結論 : パパニコロウ分類による判定結果を現乳腺細胞診報告様式に変換した. 現報告様式は明確な定義に基づいた判定区分を設けているため, 特に従来から曖昧とされてきたパパニコロウ分類 III 判定の内容をよく整理し, さらに解析的な精度管理指標の算出を可能にした. ただ, 現報告様式には不適正検体の定義や組織型推定の意義など検討すべき課題も残されている.
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