日本臨床細胞学会雑誌
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48 巻, 1 号
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原著
  • 錦見 恭子, 立花 美津子, 鈴木 博, 三橋 涼子, 井浦 宏, 山地 沙知, 大見 健二, 岩崎 秀昭, 河西 十九三
    2009 年 48 巻 1 号 p. 1-4
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/05/20
    ジャーナル フリー
    目的 : 子宮頸部扁平上皮癌症例の検診歴を後方視的に検討し, 前癌性病変について再考することを目的とした.
    方法 : (1)子宮頸部扁平上皮癌 (上皮内癌+浸潤癌) と診断された 70 例を対象とし, 癌と診断される以前の検診歴を検討した.
    (2)集団検診にて 3 年以上連続して細胞診が陰性であったにもかかわらず, 突然 CIN III 以上の診断となった 22 例において, 陰性と判定されていた集団検診時の細胞標本を再鏡検し評価した. 鏡検可能であったのは 17 例であった.
    成績 : (1)異形成にて経過観察中に癌に進展したのは 70 例中 17 例 (24.3%), 集団検診で発見されたのは 53 例 (75.7%) であった. そのうち 43 例 (61.4%) がこれまで全く検診を受けていなかった例で, 10 例 (14.3%) が集団検診にて異常なしと判定されていた既往があるにもかかわらず, 癌が発見された.
    (2)再鏡検しても異常細胞を認めなかったものは 2 例であった. dysplastic cell が少数 (1∼3 個) みられたのは 8 例で, そのうち 7 例は Bethesda System 2001 の ASC-US に相当する細胞が同時にみられた. dysplastic cell とは判定できない異常細胞がみられたのは 7 例で, そのうち ASC-US と判定されたものが 3 例あった.
    結論 : 子宮頸部扁平上皮癌は異形成からの経過観察中に発見されるよりも, 集団検診において未受診者からの発見が多い. 本邦において Bethesda System 2001 を導入することにより細胞診の精度向上が期待できると考えられた.
  • —パパニコロウ分類からみた現報告様式の有用性の検討—
    濱中 貴久子, 手塚 文明, 高橋 真紀, 畠山 カヨ, 齋藤 邦倫, 鈴木 博義, 櫻田 潤子
    2009 年 48 巻 1 号 p. 5-11
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/05/20
    ジャーナル フリー
    目的 : 日本乳癌学会が提唱している乳腺細胞診報告様式 (第 15 版乳癌取扱い規約, 2004 年) について, 私どもが従来から用いてきたパパニコロウ分類法と比較し, その有用性を検討した.
    方法 : 2007 年 1 月∼2008 年 5 月に国立病院機構仙台医療センターで実施された穿刺吸引細胞診 334 例のパパニコロウ分類による判定結果を現報告様式に変換し, さらに英国乳腺スクリーニング基準に従って感度・特異度などの精度管理指標を求めた.
    成績 : 不適正検体が 52 例 (15.6%) に認められた. 適正検体 282 例のうち, 従来のパパニコロウ分類の I・II が現様式の判定区分「正常/良性」(164 例, 58.2%) に, III の一部が「鑑別困難」(12 例, 4.2%) に, III の残りと IV が「悪性の疑い」(11 例, 3.9%) に, V が「悪性」(95 例, 33.7%) に再整理された. この判定区分への再整理に基づいて精度管理指標を算出し, 全体的感度 89.2%, 絶対的感度 79.2%, 特異度 72.4%, 偽陰性率 7.5%, 偽陽性率 0%, 陽性的中度 100%が得られた. なお, 「悪性の疑い」の組織学的悪性比率は 90.9%となり, 日本乳癌学会の求める目標値 (90%以上) をクリアした.
    結論 : パパニコロウ分類による判定結果を現乳腺細胞診報告様式に変換した. 現報告様式は明確な定義に基づいた判定区分を設けているため, 特に従来から曖昧とされてきたパパニコロウ分類 III 判定の内容をよく整理し, さらに解析的な精度管理指標の算出を可能にした. ただ, 現報告様式には不適正検体の定義や組織型推定の意義など検討すべき課題も残されている.
  • 寺内 利恵, 佐藤 勝明, 竹中 美千穂, 山下 学, 朝倉 善史, 中野 万里子, 黒瀬 望, 湊 宏, 野島 孝之
    2009 年 48 巻 1 号 p. 12-16
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/05/20
    ジャーナル フリー
    目的 : 尿路上皮癌細胞における細胞質内小腺腔 (intracytoplasmic lumina : 以下 ICL) を検索し, その診断的意義について検討した.
    方法 : 組織学的に初発膀胱尿路上皮癌と診断された 63 例と非腫瘍性病変 22 例を対象とし, 組織診検体とそれらに対応する尿細胞診検体における ICL を検索した. ICL としては, Papanicolaou 染色でも同定が容易な内腔に分泌物を認める A 型 ICL のみを検討の対象とした. 細胞診検体では 2 個以上/標本を, 組織診検体では 2 個以上/対物 40 倍視野の出現を ICL 陽性とした.
    成績 : 尿路上皮癌症例においては, 尿細胞診検体の 25.4% (16/63), 組織診検体の 27.0% (17/63) で ICL 陽性であった. 非腫瘍性病変症例においては, 組織診検体の 4.5% (1/22) に ICL 陽性であったが, 細胞診検体では ICL は認められなかった (0/22). 癌症例では高異型度の尿路上皮癌における尿細胞診検体の ICL の出現率は 44.4% (12/27), 低異型度の尿路上皮癌では 11.1% (4/36) であった. 尿細胞診検体で ICL は非腫瘍性病変症例より尿路上皮癌症例に有意に多く出現し, また低異型度の尿路上皮癌より高異型度の尿路上皮癌に有意に出現率が高かった.
    結論 : A 型 ICL は, 尿路上皮癌の判定に寄与しうる指標と考えられた.
症例
  • 土田 達, 生駒 友美, 鶴野 千恵, 堀 芳秋, 加藤 じゅん, 加藤 三典, 水野 幸恵, 海崎 泰治
    2009 年 48 巻 1 号 p. 17-21
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/11/27
    ジャーナル フリー
    背景 : 腟小細胞癌は非常にまれな疾患であり, 予後不良の疾患である. 今回われわれは腟原発小細胞癌と診断した 1 例を経験したので, その細胞診所見を中心に報告する.
    症例 : 58 歳, 女性. 15 年前に子宮体癌 (類内膜腺癌Ia 期 G1) のため, 準広汎子宮全摘出術を受けている. 2 ヵ月前より排尿困難を自覚し, 近医泌尿器科より当科を紹介された. 腟前壁に可動性のない鶏卵大の腫瘍を認め, 画像診断では肺等に遠隔転移を疑わせる所見は認めなかった. 腫瘍の擦過細胞診では壊死性背景に, 孤立散在性の小型裸核様細胞を多数認めた. 個々の細胞は N/C 比が非常に高く, 卵円形から長楕円形で軽度の不整と大小不同を認めた. クロマチンは細顆粒状で密に分布し核小体はあまり目立たなかった. 免疫染色上 Thyroid Transcription Factor-1 (以下 TTF-1) は陽性であり肺小細胞癌との鑑別が必要であったが, 臨床症状, 画像診断などの結果から腟原発小細胞癌と診断した. 放射線化学療法を行ったが, 遠隔転移し現在化学療法中である.
    結論 : 腟小細胞癌は非常にまれな疾患であるが, 臨床症状, 画像診断, 細胞診, 組織診, 免疫組織化学的染色の結果, 転移性ではなく腟原発と診断した. 診断の根拠となった擦過細胞診像を中心に呈示した.
  • 早川 智絵, 小池 淳樹, 星川 咲子, 相田 芳夫, 高木 正之
    2009 年 48 巻 1 号 p. 22-26
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/11/27
    ジャーナル フリー
    背景 : 血管筋脂肪腫 (Angiomyolipoma : AML) は平滑筋, 血管, 成熟脂肪細胞の各成分からなる比較的まれな良性腫瘍である. 今回われわれは肝に発生した AML を経験したのでその細胞像を中心に報告する.
    症例 : 60 歳代, 女性. 不正性器出血を主訴に来院. 子宮内膜生検にて類内膜腺癌 G2 と診断され, 手術目的で入院した. 術前の CT 検査で肝 S6 に不整形の腫瘤が認められた. 子宮体癌の転移が疑われ, 婦人科手術に先立って肝腫瘍に対し, 肝部分切除が施行された. 肝切除標本について術中迅速検査が行われ, 組織診断にて AML が疑われた. 迅速検査時の捺印細胞像では背景に炎症細胞と脂肪細胞および, 紡錘形細胞が出現していた. 紡錘形細胞は, 辺縁明瞭な大型集塊で出現し, 集塊内には毛細血管や成熟脂肪細胞, 大小不同のみられる異型細胞が認められた. この異型細胞は, 一部に核形不整, 大型核小体, 核内空胞等がみられ, 良悪性の鑑別を要する細胞であった. 以上の所見から非上皮系の腫瘍を疑ったが良悪性鑑別困難であった. また大型異型細胞は免疫細胞染色で, Human Melanosome (HMB45) 陽性を示した.
    結論 : AML では悪性との鑑別を要する大型異型細胞が出現することから細胞診断において慎重に観察する必要があると考えた.
  • 村石 佳重, 川畑 智子, 藤田 正志, 岩原 実, 横内 幸, 大原関 利章, 高橋 啓, 岡本 康
    2009 年 48 巻 1 号 p. 27-31
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/11/27
    ジャーナル フリー
    背景 : 浸潤癌の特殊型に分類されるきわめてまれな骨・軟骨化生を伴った乳癌を経験した.
    症例 : 77 歳, 女性. 左乳頭血性分泌を主訴に来院. CD 領域に 30 mm 径の腫瘤を触知し諸検査にて悪性が疑われたため, 針生検後左乳房切除術が施行された. 術中に施行した穿刺吸引ならびに腫瘍捺印細胞診では, 腫瘍細胞は上皮性結合の明瞭な癌腫細胞, 散在性分布を示す紡錘形の肉腫様細胞とともに, 弱い細胞間結合を示す卵円形細胞の小集塊からなる移行像が観察された. さらに, 頻度は低いが軟骨化生を見い出すことができた. これら細胞像は組織標本と対応可能であった.
    結論 : 骨・軟骨化生を伴う乳癌の診断には骨・軟骨化生像を見い出すことが重要であるが, その出現頻度は低い. このような場合, 上皮性細胞, 肉腫様細胞とともに両者の移行像である卵円形腫瘍細胞に注目することが, 本組織型を推測するうえで重要であると考えられた.
  • 松原 美幸, 土屋 眞一, 原田 大, 川本 雅司
    2009 年 48 巻 1 号 p. 32-34
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/11/27
    ジャーナル フリー
    背景 : Diabetic mastopathy は, 乳腺線維症の範疇に入り, 糖尿病との関連性が深いまれな良性病変であるが, 臨床的には浸潤癌との鑑別を必要とすることが多い.
    症例 : 50 歳代, 女性. 右乳房腫瘤を自覚して来院. 超音波検査で, 右 AC 領域に乳癌を疑う辺縁不整な低エコー腫瘤が描出されたため, 穿刺吸引細胞診が施行された. 細胞像としては, 少数のリンパ球とともに末梢乳管上皮細胞の集塊が 1 ヵ所に認められた. 生検にて, diabetic mastopathy と診断された.
    結論 : 臨床・病理双方で, diabetic mastopathy の臨床像・組織像・細胞像を理解することが, over surgery を防ぐうえで重要である.
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