日本臨床細胞学会雑誌
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症例
粘液性副腎皮質腺腫の 1 例
—転移性粘液癌との鑑別を含めて—
石田 光明吉田 桂子宮本 敬子岩井 宗男宮平 良満山本 将司九嶋 亮治岡部 英俊
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2009 年 48 巻 4 号 p. 197-200

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抄録

背景 : 粘液性副腎皮質腺腫の 1 例を経験したので, そのタッチスメア像について, 鑑別診断の検討を含め報告する.
症例 : 60 歳, 女性. 約 7 年前から高血圧で投薬治療を受けていた. 腹部超音波検査で右副腎腫瘍を指摘され, 腹腔鏡下副腎腫瘍摘出術が施行された. タッチスメア標本では豊富な粘液性背景の中, 大小不同の類円形から多角形細胞が結合性の緩い集塊を形成し, 紡錘形細胞も散見された. 核は細胞質の中心に位置し, 核クロマチンは細顆粒状で, 均等に分布していた. 大型核や核小体の目立つ大型細胞が散見されたが, N/C 比は低く, 分裂像や壊死はみられなかった. 細胞質内に粘液はみられず, 細胞外粘液はアルシアンブルー染色陽性で, ヒアルロニダーゼで消化された. 以上の所見から粘液性副腎皮質腺腫と推定された. 病理組織学的検索で粘液性副腎皮質腺腫と診断した.
結論 : 副腎皮質腺腫は細胞外粘液の貯留を伴うことがあり, その粘液はヒアルロニダーゼで消化されたので, 粘液癌の転移との鑑別が可能となることが明らかとなった. また細胞形態の多彩性に紛らわされることなく, 壊死の有無や分裂像の増加を検討することが副腎皮質癌との鑑別に有用であると考えられる.

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© 2009 公益社団法人 日本臨床細胞学会
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