日本臨床細胞学会雑誌
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症例
18 歳女性の副腎に発生した低分化型神経芽腫の 1 例
小山田 裕行伊藤 仁宮嶋 葉子芹澤 昭彦加戸 伸明梶原 博梅村 しのぶ長村 義之
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2009 年 48 巻 4 号 p. 192-196

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抄録

背景 : 神経芽腫群腫瘍は神経堤由来とされ, 主として 4 歳頃までに発生するが, 年長期や, 成人例もまれにみられる. 今回われわれは 18 歳女性の副腎に発生した大型多核細胞を多数伴った低分化型神経芽腫を経験したので報告する.
症例 : 近医にて左副腎腫瘍を指摘され来院. 術前検査にて無機能性副腎腫瘍と診断され, 腹腔鏡下左副腎摘出術施行. 術中, 腫瘍内の嚢胞状内容液の吸引細胞診が行われた. その細胞所見は, 小型∼中型の円形∼楕円形および短紡錘形の腫瘍細胞が散在性に認められ, 大型の多核腫瘍細胞が多数混在し, 腫瘍細胞間は神経細線維状を呈していた. また, 大型の多核腫瘍細胞は, 細胞質が豊富で, 核偏在性を示し, 高度の核異型を有していた.
結論 : 副腎腫瘍を細胞診で経験する機会は少ない. 18 歳女性の副腎に発生した多核巨細胞を伴う神経芽腫を経験した. 神経芽腫は一般的に乳幼児に発生し, その細胞像は小型類円形で細胞質に乏しい均一な腫瘍細胞よりなる. しかし, 年長期や成人にもみられ, 細胞像も著しい多形性を示す場合があることを念頭において鏡検することが肝要と考えられた.

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© 2009 公益社団法人 日本臨床細胞学会
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