抄録
目的 : われわれは, 針, ブラシなど細胞採取器具の洗浄液に, 従来生理食塩水や RPMI1640 を用いてきた. しかし, 細胞の変性や膨化をきたすことが多く, 細胞形態の観察, 判定にしばしば困難を感じていたため, 以下に示す 4 種類の溶液を用いて細胞診標本を作製し, 細胞形態保存能の比較検討を行った.
方法 : 肺および大腸の進行期腺癌病変から腫瘍細胞をブラシ擦過採取し生理食塩水, RPMI1640, 乳酸リンゲル液, 低分子デキストラン加乳酸リンゲル液 (以下 D-リンゲル液) に浮遊させ, Papanicolaou 染色 (以下 Pap) 標本, メイ・ギムザ染色 (以下 MG) 標本を作成し, 1) Pap 標本にて形態保持の状態を 5 項目にて評価, 2) MG 標本にて核形の保存状態を観察した.
成績 : D-リンゲル液を使用した標本は, 他の 3 種類の溶液を用いた標本に比べ, 1) Pap 標本における形態保持の観点のうち, 核クロマチン, 核膨化, 核形状の 3 項目で特に良好な評価であり, 2) MG 標本で観察した核形の保存状態も良好であった.
結論 : D-リンゲル液は, 一部の細胞で軽度の核濃縮傾向が認められるが, 検討した範囲では最も有用な細胞洗浄液であると考えられた.